オーバーハンドパスにおける、目標に対して正対することと、サイドセットについて

ども、品川グリフィンズヘッドコーチの間です。

四角パスという練習メニューがあります。グリフィンズはバレーボール歴1年未満の初心者がほとんどなのでなかなか実施できないのですが、内容は単純で、正方形の頂点4箇所に子供を立たせ、右回りに隣の子へ順にパスしてボールを繋いでいくというものです。4人以上いる時は、パスした後、パスした先の頂点へ移動させます(4人未満の時は三角パスにしますね)。そうして順繰りぐるぐる回ります。オーバーハンドパスとアンダーハンドパス、右回りと左回り、それぞれ計4セットやります。その日集まっている子供たちのスキルレベルと相談しながら、30回続いたら次へとか、なかなか回数を達成できずだらだら長く続きそうな場合は、時間で区切ってしまったりします。

ついこの間、この四角パスを行う機会があったのですが、見ていてなかなか興味深いことに気がつきました。子供達は、おそらく無意識に、ボールを送る方へ正対するのと、サイドセットを、場合によって使い分けていたんですね。

サイドセットというのは主に、ボールを送る方向へ正対しないオーバーハンドパスのことを言います。以下の動画を見てもらうとわかり易いかもしれません。

勘違いしがちなのは、サイドセットということで体の真横にボールを送る場合のみを指すように思いがちですが、正対しない場合、右斜め前や左斜め後方に送る場合にも、広義に「サイドセット」という言葉を使います。

さて、オーバーハンドパス、特にセッターへ指導する場合には、「ボールを送る方へ向きなさい」と指導するのが一般的だと思います。グリフィンズでももちろん、基本的には正対するように指導しています。しかし、処理するボールの状況によっては、正対できない場合があるかと思います。大きくレセプションが乱れたり、低く返球されたり。そういった場合には、サイドセットを用いた方が有効であると思います。必ずしも、正対する必要はないはずです。なぜなら、ボールを送る方向に正対するというのは、あくまでも手段であって目的ではないからです。目的はあくまでも、アタッカーに打ちやすいセットを供給すること。そのために、サイドセットの方が有効であるならば、迷わずそちらを選択するべきなのです。

またサイドセットには、「どの方向にボールを送るのか直前まで分かりにくい」という利点もあります。セッターなどが、ブロッカーを惑わすためにサイドセットを用いることは、トップカテゴリでは当たり前に行われていることです。

これを、「まだ小学生だから、基本に忠実に」と、サイドセットを禁ずる必要は全くなくて、もちろん基本は大事ですが、あくまでも基本は基本、状況によってサイドセットを選択することも認めてあげるべきだと思います。要は最終的に、アタッカーの打ちやすいセットが上がるという目的が達成されるのであれば、手段などどうでも良いのですから。手段が目的になってはいけません。そのためには普段から、サイドセットの練習もしておくこと。そしてきちんと、指導者が見極めて、今のは正対できるボールだったのか、サイドセットでなくては対応できなかったのかを判断して、褒めるところは褒め、直すところは直し、的確な指導を行わなければなりません。大変だ(苦笑)

最後に、以前に以下のような記事を書きました。

小学生のセッターにキャッチボールが多いのは、この「ボールを送る方へ正対する」を頑なに守ろうとするから、というのも一因であると感じています。本来、ボールの下へ入るのが難しく、オーバーハンドでギリギリ処理できるかどうかくらいのボールを、なんとか正対して送ろうとするために、体の向きを変えながらキャッチ→体の向きを変え終わったらリリース、という流れになっているのをよく見かけます。確かに、まだ技術の拙い小学生に正確にボールを飛ばしてもらうためには、目標に正対するのが一番良いわけですが、反則となる可能性を上げてまで守らせるものではないと思います。

ちなみににグリフィンズでは、対人パスの際に、直上→サイドセットの流れを入れるようにしています。そういう日々の積み重ねが、最初に書いた四角パスでの自然なサイドセットに現れているのではと思っています。

あ、もちろん、四角パスごときでパスが乱れてサイドセットを連発するような状況は、グリフィンズの子供達のスキルレベルがまだまだ低く未熟なためで、もっと上級者の子達だけで行えば、常に目標に正対しつつ四角パスを行うことができるのでしょうね。

<追記>

実はかの竹下佳江選手も、サイドセットを多用していたのだということが、次の動画を見ると良く分かると思います。