理念・方針
理念
競技人口増加の足がかりに
バレーボール女子日本代表が、2010年の世界選手権に続き、2012年のロンドン五輪にて、28年ぶりの銅メダルを獲得しました。ところが、小学生バレーの競技人口は年々減少し続けているそうです。メダルの獲得により、人気が上がり、競技人口が増えても良さそうなのに、増えない。何故でしょうか。
一つには、古い「スポ根」イメージの定着が挙げられるでしょう。東洋の魔女が精神論を前面に押し出した練習方法で金メダルを獲得して以降、高度成長期におけるいわゆる「スポーツ根性もの」の大流行に乗っかり、「サインはV」、「アタックNo.1」と、バレーボールを題材にしたスポ根ドラマ、アニメが大ヒットしました。「ミュンヘンへの道」という、実写とアニメをミックスした番組もありました。その頃のイメージが、未だに残っているように思います。近年においても、日本代表の活動を伝えるテレビ番組において、何かにつけ、ワンマンレシーブや坂道ダッシュで選手がヘトヘトになる場面が繰り返し放送され、監督が選手に厳しい言葉をぶつけるシーンばかりが強調されていました。そういった世間の古いイメージが、主に保護者の方々から、バレーボールを遠ざける要因になっていると思います。
もう一つは、小学生バレーボールクラブにお子さんを預ける際の、ハードルの高さにあると思います。これはバレーボールに限った話ではありませんが、保護者による当番のあるチームがほとんどだと思います。練習当番や、遠征時の引率当番、その他会議へ出席する当番など。共働きが当たり前になっている今の世の中、お子さんがやる気になっているにもかかわらず、保護者が当番をできないと、入部を断念されるケースをいくつか目の当たりにしてきました。
自分で考える選手を
2015年のワールドカップにおける、バレーボール男子日本代表の活躍は記憶に新しいところです。しかし見ていると、チームとしてのコンセプトが大きく変化したわけではなく、選手個人のスキルに頼るところが大きいと感じました。上記で触れた女子日本代表も実は同じで、選手への依存度が相当に高いです。そのことについてはまた色々と言いたいことがあるのですが(苦笑)、喜ばしいのは「きちんと自分で考えてバレーボールが出来る選手が台頭してきた」という点です。
バレーボール男子日本代表の大きな変化は、サイドへのトスがこれまでのように「低く速く」ではなく、「少し高めのゆったりとした」ものに変わったことでした。これまで、日本よりも高さのある相手チームに対して、とにかく速いトスで相手ブロックを振り切る、というコンセプトでずっとやってきていたので、この変化には目を見張りました。スタッフによる方針の転換かと思ったのですが、あれこれ記事を読んだ結果、これらはどうも、選手の中から「高いブロックに対しては、速いトスよりも選択肢の広がるゆったりしたトスの方が良い」という提案があったようです。現に、ミドルへのトスは、ある選手はレセプションが乱れると、ネットから離れた位置でゆったりしたトスを打っているのに、ある選手は未だ常にネットにへばりついてトスの上がり端を叩いています。
上記「競技人口増加の足がかりに」でも書いたように、イメージだけでなく、実は現場も長らく「スポ根」を地で行っていました。練習はとにかく根性、根性、指導者は選手を大声で怒鳴りつけ、時には体罰という名の暴力を振るうこともありました。そうやって、上から押さえつけられ、指導者の言うことに従うだけの練習をこなしてきた選手は、自ら考えることができなくなっていたのだと思います。
それがこうして、日本代表の若手の中に、しっかりと自分で考えてバレーボールが出来る選手が出てきたのを見ると、指導の現場もずいぶん変わってきたのだなと実感できます。上から押さえつける指導から、選手の自主性を重んじる指導へと、今、指導の現場は過渡期にあると思っています。
品川グリフィンズの理念
上記のことから、品川グリフィンズは、以下の3つを理念として掲げます。
-
- バレーボールが持つ、古い「スポ根」イメージを払拭する
- 子供達が気軽にバレーボールを楽しめる環境を作る
- 子供達が考えてバレーボールをする為の助けとなる
方針
体罰・暴力について
日本小学生バレーボール連盟の方針に則り、体罰・暴力を行いません。
将来を見据えた指導を
小学生バレーは、中学以上のカテゴリとは異なり、ローテーションのないフリーポジション制です。手っ取り早く勝てるチームを育てるには、背の高い選手はブロックとスパイクに専念させ、それ以外の選手をレシーブに専念させるのが効率が良いです。しかしだからと言って、背の低い子が将来も背が低いとは限りません。中学や高校で身長が伸び、いずれはスパイクやブロックに活躍する可能性もあります。その時に備え、どの技術も満遍なく指導することを心がけます。今勝つことだけを考えればそれは無駄なことであっても、将来において無駄とは限りません。
最新の技術を
例えば、スパイクスイング。日本の指導の現場では、「腕をまっすぐ上げて、まっすぐ振り下ろす。両肩はネットと平行に」といった指導が多く見られました。しかし最近では、そのような「ストレートアームスイング」ではなく、体幹でしっかりと腕を振る「サーキュラースイング」の方がより、効率的に力強いスパイクが打てることが分かってきています。このように、昔の常識は、現在では常識でなくなって来ています。常に指導者が最新の技術、戦術、指導方法を勉強し、指導の現場に反映させて行きます。
少ない時間で効率の良い練習を
これは指導者の都合もありますが、品川グリフィンズの練習は基本、週2〜3回となっています。強豪と呼ばれるチームには、週6回以上練習するところもありますから、そこから比べれば相当少ないです。しかしそれでも、そのチームに勝つことは不可能とは思いません。少ない時間でも、効率良く練習できるよう、メニューを工夫していきます。また、子供達が本当にバレーボールを好きになってくれれば、週2〜3回の練習では物足りなくなり、練習のない日も何かしら、自分たちで工夫し、練習するようになると思っていますので、効率良く、かつ楽しい練習を心がけていきます。
楽しく厳しく
先に述べたように、勝利至上主義に陥り、体罰・暴力を振るったり、偏った技術を指導するようなことはいたしません。しかし、「勝つ」ことを諦めるわけではありません。バレーボールが勝敗を決するスポーツである以上、貪欲に勝利を求めていきます。それは、勝つことでしか得られない「喜び」があると思うからですし、ある程度「勝てる」ようにならないと、バレーボールの「本当の楽しさ」は分からないと思うからです。また「楽しい練習」を心がけますが、それは決して「ちゃらちゃらへらへら」と、いい加減に取り組みなさいということではありません。真剣に練習に取り組み、努力することの大切さや、上達することの喜びを感じてもらえたらと思っています。
保護者の当番について
特に保護者の方に当番等をお願いしておりません。練習や、練習試合、公式戦の遠征など、コーチングスタッフのみで見ますし、施設調整会議や連盟の会議なども、コーチングスタッフが出席します。保護者の皆さんには是非、お子さんの成長していく姿をその目に焼き付けることだけに集中していただきたいと思います。もちろん、自主的にお手伝いをして頂けるという場合には、拒む理由はございません。大歓迎です。
品川グリフィンズ ヘッドコーチ
間 誠一郎