小学生、特に低学年へのオーバーパスの指導について思うこと

どうも、グリフィンズヘッドコーチの間です。ふと思いついたというか、ずーっと考え続けてきて、ふっと腑に落ちたことを書きたいと思います。

小学生のオーバーパスについて。

小学生バレーに関わるようになって、まず一番驚いたのが「オーバーパスのキャッチボール判定基準の甘さ・曖昧さ」です。キャッチボールというのは、バレーボールを持ってしまうという反則のことです。公式戦を見ていて、大人であれば当然のようにキャッチボールの反則を取られるようなケースでも、審判が笛を吹かない、反則を取らない、という場面を何度も目にしました。

それを受けて、いろんな人に話を聞いたのですけど、ある方には「キャッチボールを厳しく取ることによって、その選手がオーバーパスを避けるようになる、積極的にオーバーパスを使わなくなってしまう、それは避けたい」と言われました。また他の方からは「今は持っていても、体が大きくなり、筋力がつくにつれ、自然に持たなくなる」という意見も伺いました。だから、判定基準は甘くて良いのだ、そして甘いのだから、多少持つように指導しても問題ないのだ、という論理です。

私は常々、上記のようなご意見には違和感を感じてきました。反則を取られると積極的にオーバーパスを使わなくなってしまうというのは、それは指導の問題であり、反則を取られても、オーバーパスで捌くべきボールはオーバーパスで捌きなさいと指導すれば良いだけの話だと思うのです。そこでそれを「ミス」として処理する、叱るなどしてしまうから、オーバーパスに消極的になってしまうのではないでしょうか。そこで反則を取られたのは、そこで「オーバーパス」という選択をしたからではなく、技術的に拙いからであるはずです。積極的にオーバーパスを使おうとした姿勢は褒め、技術的に足りないのだから練習頑張ろう、とするべきでしょう。また、成長とともに持たなくなるというのも、実際に中学・高校で指導をされている方から「持つ癖がついてしまっていると直すのに苦労する」という話もお聞きしています。

さて、このような状況の中で、小学生に対してどのような指導をしていくべきなのか、オーバーパスを指導するにあたって、どのような形で教えていけば良いのかとずっと考えていたわけですが、今回ふと「そうか」と思ったのでここに記しておきます。

キャッチボールのことばかりを気にしていて、つい忘れがちになってしまうのですが(私もずっと忘れていた)、実は小学生というのは、オーバーパスによるダブルコンタクトを免除されています。オーバーパスのプレー中に、ダブルコンタクトの反則を犯しても、それを反則として笛を吹かれないということです。ダブルコンタクトし放題です(もちろん、明らかに故意に犯したような場合は吹かれる対象になりますが)。これって実は盲点なのではないでしょうか。ダブルコンタクトを免除されていることによって、その指導法が見えてきた気がしました。

ダブルコンタクトを免除されているのであるから、オーバーパスの指導としては、まずは突くような、弾くようなオーバーパスを指導するべきなのです。突く、弾くことによってダブルコンタクトの反則を犯す可能性は高まりますが、小学生ではそれを反則とは取られないのです。ですからまずは、持たない、突く、弾くようなオーバーパスを覚えさせるべき。

もちろん、そのようなオーバーパスですと、正確性が損なわれるケースが多いでしょう。きちんとボールの下、飛ばしたい方向の反対側へしっかり回って、ボールの芯を正確にヒットしてあげる必要があります。それがなかなか出来ない子は確かに多いです。「きちんとボールの下に潜り込む」というのは、センスが良くすぐできてしまう子もいますが、多くの子が一朝一夕ではできるようになりません。

しかし、だからこそではないでしょうか。ボールを持ってしまうケースというのは主に、ボールの下にきちんと入らず、あるいは入れず、体の軸からずれたところでボールをキャッチし、飛ばしたい方向へ「持って行ってしまう」ことによって起きます。なので、オーバーパスでボールを「持たないようになる」には、ボールの下にきちんと入る必要があるのです。ところが、ボールを持ってしまう子は、ボールの下にきちんと入らなくてもボールを持って投げてしまうことによって、ある程度ボールをコントロールできてしまうのです。ですから、いつまで経ってもボールの下に正確に潜り込む能力が育たない。ボールを持たなくなるには、きちんとボールの下に入らないといけないのに、ボールを持っているとその能力が育たないのです。これが、一度ボールを持つ癖ができてしまうと、なかなか持たないように直せない原因だと思います。

ということでまずは、形なんかどうでもいいから、突く、弾くようなオーバーパスを教えること。そのようなパスで、オーバーパスにおける「きちんとボールの下に入る」ということの重要性を学習させ、その能力をきちんと育てること。そこをまず、きちんとできるように育てることが第一なのではないでしょうか。

形なんていうのは、その後でどうにでもなると思います。そういう私も、この歳になってオーバーパスの形を少し矯正しました。筋力がついて、コーディネーション能力が育ち、自分の体を自在に操ることができるようになれば、形なんてのは後からどうにでもできる。そう思うのです。

オーバーパスの指導というのは、まずはオーバーパスの形でボールをキャッチするところから始まり、キャッチして投げ、キャッチして投げ、これを徐々に早く行うことによってオーバーパスになっていく、というのがこれまでのよくあるやり方だと思います。そういった練習方法が必ずしも間違いだとは言いません。かくいう私もそのように指導され、しかし特に持つオーバーパスが身についたりはしませんでしたから。

具体的にどう指導すれば、というのはこれから試行錯誤していくつもりですが、最近は初心者に良く「ボールを放す瞬間に『背伸び』しなさい」と言っています。「膝を使いなさい」と良く言われますけど、筋力が足りなくて、曲げた膝を瞬間的に伸ばせない子供を散々見てきました。その点「背伸び」は、どの子も割と感覚的に理解して、実践できるように思います。実は「背伸び」といっても、知らないうちに股関節、膝、足首など、全身を使っているんですよね。ボールを持たせることはせず、ボールを「突く、弾く」瞬間に「背伸び」することを意識させる。そのような導入方法が、初心者には良いのかな、と現在では思っています。

ボールをしっかり手の中に入れて、手首を柔らかく使い、膝を使って「体で運ぶ」ようなパスは、それこそ体ができて、筋力が付くに従って自然と身について行くのではないでしょうか。

その辺の指導方法に関しては、「突きトスが初心者になんで良いか ( バレーボール ) - Tのブログ - Yahoo!ブログ」の記事などを参考にしています。ありがとうございます。

追記。「突く、弾く」ようなパスですと、小学校低学年の子などは、まだ力が足りなくてボールを突き返せない、弾き返せないケースがあると思います。そこで無理してパスをさせることによって、遠くに飛ばそうと「持つ」ようになってしまうこともあるでしょう。そういう子には、軽量4号よりも軽いキッズバレーボールなどを用いて指導することも考えるべきだと思っています。人数がギリギリで、そのような子も試合に出さざるを得ないような場合もあり、一人異なるボールで練習するのは難しいケースも多々あるでしょうが、そのような子はおそらくサーブを入れることもできないでしょうし、いくら人数が足りないからといってそもそも、試合に出場させることがその子にとって本当に良いのかどうかなど、考える必要がありますよね。できれば、公式戦は4年生以上で常にチームが組めて、それ以下はそれぞれのレベルに合わせて柔軟に指導できるような体制ができれば、より良いとは思うのですけれど、昨今の競技人口の減少を鑑みるに、なかなか難しい問題であるとは思います。